2-3.反変テンソルと共変テンソル

相対性理論を理解するための数学

反変テンソルと共変テンソル

 

 前回、テンソルの定義について説明した。今回の記事では、テンソルの一例である反変テンソルと共変テンソルについて説明する。よく相対性理論の参考書では初めに反変テンソルや共変テンソルがベクトルなどを例としてセットで説明されることが多く、初学者が理解しやすい説明であるというメリットがある反面、テンソルの本質である「数式が座標変換に対して不変であることを保証する」という部分があまり強調されず、少ない説明で終わることに多い。十分な理解がないまま一般相対性理論を理解しようとすると、一般相対性理論の仮定である一般相対性原理になぜテンソルが関わってくるのかの理解がより難しくなり、そこで一般相対性理論の理解をあきらめてしまう方が多いと思う。そこで、前々回の記事でテンソルとは何か?を見ていただいた上で、さらに今回の記事において、よく相対性理論で登場する反変テンソルや共変テンソルがテンソルの一例であるということを覚えていただきたい。

反変テンソルと共変テンソルの例(混合テンソルも)

 反変テンソルと共変テンソルの違いは下記の例を見ればわかる思うが、テンソルの成分の変換規則の違いにあり、変換が逆の関係になっている。

反変テンソル

 座標系\(x^\mu\)と\(y^\mu\)に対して1階のテンソル\(V\)の成分をそれぞれ、\(v^i\)、\(v’^i\)としたとき、それらが\[v’^i=\frac{\partial y^i}{\partial x^k}v^k\]という変換則に従うとき、\(v^i\)、\(v’^i\)は1階の反変テンソル\(V\)の成分であるという。ここで、反変テンソルの場合、添え字は成分の上につけるというルールがある。
 
 反変テンソルの例としてよく物理で登場する速度ベクトルなどである。

共変テンソル(2階の共変テンソル)

 
 座標系\(x^\mu\)と\(y^\mu\)に対して2階のテンソル\(g\)の成分をそれぞれ、\(g_{ij}\)、\(g’_{ij}\)としたとき、それらが\[g’_{ij}=\frac{\partial x^k}{\partial y^i}\frac{\partial x^l}{\partial y^j}g_{kl}\]という変換規則に従うとき、\(g_{ij}\)、\(g’_{ij}\)は2階の共変テンソル\(g\)の成分であるという。ここで、反変テンソルの場合、添え字は成分の下につけるというルールがある。
ちなみに、この\(g_{ij}\)は別の記事で紹介するが、計量テンソルと表記を同じにした。つまり、計量テンソルも2階の共変テンソルである。この計量テンソルは一般相対性理論ではとても重要な量であり、何度も登場するので、覚えておいてほしい。

混合テンソル(2階の混合テンソル)

 座標系\(x^\mu\)と\(y^\mu\)に対して2階のテンソル\(R\)の成分をそれぞれ、\(R^i_j\)、\(R’^j_i\)としたとき、それらが\[R’^i_j=\frac{\partial y^i}{\partial x^k}\frac{\partial x^l}{\partial y^j}R^k_l\]の関係があったとき、\(R^i_j\)、\(R’^i_j\)は2階の混合テンソル\(R\)の成分という。
 
 このように、添え字の付け方で分かりやすくしており、添え字が上だけに出てきた場合は反変テンソルであり、下だけの場合は共変テンソルである。そして、上下に出てきた場合は混合テンソルとなり、テンソルの階数はすべての添え字の合計である。

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