1.アインシュタインの縮約規則

相対性理論を理解するための数学

アインシュタインの縮約規則

アインシュタインの縮約規則

 相対性理論で出てくる数学において総和\(\sum\)を取る機会が頻繁にある。そのため、総和を省略し、数式の記載を簡素化したものが、アインシュタイン自身によって考えられた。それが「アインシュタインの縮約規則」であり、今回はその規則の内容と使用例及び注意点を解説する。

●アインシュタインの縮約規則
 多項式における1つの項に2つ出てくる任意の添え字は、その添え字の値\(1,2,\cdots n\)
   にわたる総和を表す。
注意
1. 任意の項に同じ添字記号が2つより多く現れてはいけない。
2. \(a^i_jx_ix_i\)は\(a^i_jx^2_i\)とみなす。
3. \(a_i(x_i+y_i)\)は式を展開して\(a_ix_i+a_iy_i\)にしてから総和を取るというとことを
意味する。       
例.\[a_1x_1+a_2x_2+\cdots a_nx_n=\displaystyle\sum_{i=1}^{n}a_ix_i\]
※ \(a_i=a_1,a_2,\cdots,a_n\)
  という総和があったときに\[\displaystyle\sum_{i=1}^{n}a_ix_i=a_ix_i\]
  と\(\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\)の総和記号を省略することによって書く手間を少なくしたものである。

 

フリーの添え字とダミーの添え字

 \(a^i_jx_i\)を例にとると、
 ・\(j\)は\(1,2,\cdots n\)のどんな値も取りうる。この\(j\)をフリーの添え字という。
 ・\(i\)は\(1,2,\cdots n\)の値で総和を取る。この\(i\)をダミーの添え字という。
※フリーの添え字についての注意
\(i=k\)の場合を除き、\(a_{ij}x_j\neq a_{kj}x_j\)となるため、フリーの添え字は等式を成り立たせるためには、同じ記号にしなければならない。
※ダミーの添え字についての注意

\[a_{ij}x_j+b_{ij}y_j=a_{iv}x_v+b_{il}y_l\]

のように、各項でのダミー添え字は特定の記号を使う必要はないが、別の添え字に各項で変更したい場合は、各項において2つの添え字を同じ添え字にしなければならない。

使用例と注意点

1. 二重和

\begin{eqnarray}a_{ij}x_iy_j&=&a_{1j}x_1y_j+a_{2j}x_2y_j+\cdots +a_{nj}x_ny_j\tag{\(i \)での総和}\\&=&(a_{11}x_1y_1+\cdots +a_{1n}x_1y_n)\tag{\(j \)での総和}\\&&+(a_{21}x_2y_1+\cdots +a_{2n}x_2y_n)\\&&\quad\quad\quad:\\&&\quad\quad\quad:\\&&+(a_{n1}x_ny_1+a_{n2}x_ny_2+\cdots +a_{nn}x_ny_n)\end{eqnarray}
※3重和以上の場合も同様。

2. 代入

 \(y_i=a_{ij}x_j\)を式\(L=b_{ij}y_ix_j\)に代入するとき、\(L=b_{ij}a_{ij}x_jx_j\)とすると、\(j\)において同じ添え字が4つになり、一つの項に2つより多く同じ添え字が表れてしまう。
 なので、代入するときは、
 1. 代入元のダミー添え字と代入先のダミー添え字が同じ記号にならないようにする。\[y_i=a_{ij}x_j\quad \Rightarrow\quad y_i=a_{ir}x_r\]
 2. 代入する。\[L=b_{ij}(a_{ir}x_r)x_j=a_{ir}b_{ij}x_rx_j\]

3. 注意すべき成り立たない例

1. \(a_{ij}(x_i+y_j)\neq a_{ij}x_i+a_{ij}y_j\)
 左辺はフリーの添え字がないのに対して、右辺は\(i\)と\(j\)がフリーの添え字となっている。
 つまり、()の中に異なる添え字のあり、係数の添え字と()の中の添え字が被っている場合は分配ができない。逆に、共通因数以外の文字の添え字記号が異なる場合は因数分解できない。
2. \((a_{ij}+a_{ji})x_iy_j\neq 2a_{ij}x_iy_j\)
 ダミーの添え字は2つ同時に変更しなければならず、\(a_{ij}x_iy_j\neq a_{ij}y_ix_j\)の為、等式は成り立たない。

参考文献

・デイヴィッドC.ケイ(2011)「テンソル解析」クストディオ・D・ヤンカルロス・J訳,ブレアデス出版
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